カールスタード総合大学所属インゲスンド音楽大学
脳機能回復促進音楽療法(FMT-metoden)
福祉国家、人権の国ともいわれるスウェーデンには、独特の音楽療法「脳機能回復促進音楽療法(FMT-metoden)」があります。このメソードは、ラッセ・イエルム(Lasse Hjelm) 氏が創立したスウェーデン独自の音楽療法です。この研究所で、当基金との提携により、日本人も受講できるコースが開設されることになりました。
- 脳機能回復促進音楽療法とは?
音楽療法というと、一般的にグループのクライエントを対象に一緒に演奏したり、歌ったりする形が多いようです。そして、色々なメソードで、クライエントが音楽に反応し自ら演奏するようになるのを助け、その過程で、つまり音楽の体験やカウンセリングによって、クライエントが癒されるのを手助けするようです。
脳機能回復促進音楽療法は、その内容とはかなり異なり、治療中に言語は全く使用せず 、イエルム氏が開発した音のコードが、クライエントの筋肉(動作)を通して 脳を刺激するという、ユニークなものです。
この療法の一番の特徴は、次のカテゴリーに当てはまる人が、病気や環境の影響など、何らかの原因によって、身体の機能をも制御する脳の機能が、アンバランスになっている事実に注目している事です。一対一の個人治療で、言葉は全く使用しません。テラピストが音響ピアノを、クライエントが幾つかの打楽器を使用します。
イエルム氏が創作した音楽のコードをテラピストが弾くと、クライエントの中で何かをしたい(行動)という要求が生まれ、クライエントは打楽器を打ち始めます。テラピストはクライエントの様子を見ながら、音楽コード、打楽器の位置や種類などを色々と変化させていきます。クライエントのこのような筋肉を使った行動が、自身の脳に記憶トラック(航跡)を作り出し、結果的に脳のアンバランスが回復されるのです。つまり筋肉と神経を通して、脳に刺激を与える療法なのです。
- 療法の対象となるカテゴリー
1)リハビリテーション
出生時損傷(CPなど)、筋肉の病気、事故による障害、脳梗塞
2)ケア
能力障害、行動障害、自閉症及びそれに類似するもの
幾つかの精神病のケア、老人のケア、認知症
3)機能低下
読み書き困難(Dyslexi)数学的思考困難、集中困難、アスペルガース
シンドローム、DAMP, ADHD, ADD, 幾つかの精神的問題
4)自発的セラピー
生活向上、ストレス解消
- 脳機能回復促進音楽療法士(FMT療法士)
現在FMT療法士として認定された療法士は200人以上で、スイス、ロ ンドン、シンガポールでも活躍しています。世界保険機関(WHO)が、 このメソードに注目し、イエルム氏を韓国に派遣したことがきっかけとなり、 数人の韓国人がウップサラで脳機能回復促進音楽療法を学びました。1995年以来、 ウップサラ、アカデミスカ病院の精神科で、この療法を取り入れるプロジェク トが続いています。また、1997年以来、スウェーデンのリュウーホーブ病 院で、このFMTメソードが使われています。
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- FMT紹介DVDブック
このメソッドを紹介するDVDブック「スウェーデンのFMT脳機能回復促進音楽療法」(加勢園子、ステファン・パップ共著、日野原重明推薦、春秋社刊、2007年4月20日発行)をぜひお読みください。FMTの構造と特徴、使われる音楽や楽器、対象となる障害カテゴリー、FMTの基準などが詳しく紹介されています。尚、この本は、天皇皇后両陛下にも御訪瑞の際に献呈されました。
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スウェーデンの
FMT脳機能回復促進音楽療法
(2007年7月20日発行・春秋社)
加勢園子、ステファン・パップ共著
日野原重明氏推薦 (日本音楽両方学会理事長、聖路加国際病院名誉院長) |
- 現在行われている科学的な視点にたったFMTの研究
- アニータ・グランベリー氏およびM.Wacker教授よる”ドレスデンプロジェクト”
Markerless Motion Captureを使って身体の動作を測るプロジェクトです。
- ソルヴィエグ・ヨハンソン氏およびC-J.Törnhage医師による”ショヴデプロジェクト”
Törnhage医師がヨハンソン氏とグランベリー氏の持つ6歳児の分析・観察結果を集め、医師の視点から分析。
脳機能回復音楽療法士養成コース
・募集人員
数名。
・受験資格
義務教育を終了し、FMT療法士の資格所得を希望する者。
・特典
授業はスウェーデン語で行なわれるが、日本語での内容補習、受
講者のサポートを受けられる。
・カリキュラムの主な内容
学年\学期 |
前期(9月ー12月) |
後期(1月ー5月) |
準備期間(半年ー1年間) |
スウェーデン語、音楽理論と即興演奏(ピアノ)、ピアノ演奏 |
第1年 |
児童の動作の発達、人間学、就学前の音楽プログラムテスト、才能と行動、人間になるということ、実習レポート |
全体的発達(ピアジェ)、脳機能回復音楽療法(FMT)、学習の過程、6才児の分折、ハンディキャップとは何か、神経学、音楽コード、普通でないということ(CP)、交通事故障害、脳梗塞、理論のまとめ、実習レポート |
第2年 |
テラピーの概念、療法士の職場環境、クライエントの発達速度と習得、神経学、発達障害、MBD, DAMP, 聴・覚・視障害、学校問題、音楽コードの演奏、論文、デイケアの見学 |
聴・覚・視障害、自閉症及び他のシンドローム、デイケアの見学、観察技術、幼稚園のテスト、評価、論文、講演技術と立論、ビデオレポート、スーパービジョン |
第3年 |
感覚の統合、卒論の準備、FMT療法の実践、神経学、神経精神学、加齢について、デメンス |
音楽コードのテスト、療法の実践テスト、ビデオレポート、FMT療法の全体像、スーパービジョン、卒論のセミナー、結論 |
実習もスウェーデン語で行なわれる。 希望者は、日本で(日本語で)実習を行なうことができる。
・準備期間
1)音楽理論と演奏(ピアノ)、スウェーデン語は、これまでの経験によって、半年間コース、又は1年間コースを選ぶ。
2)スウェーデン語は、当基金の推薦する語学学校に通う。
・入学応募受付締め切り
毎年4月15日、入学試験 5月頃
入学を申し込むに当たり高校卒業レベルのスウェーデン語能力が必要 (日本でスウェーデンFolkuniversitetetのディスタンスコースのスウェーデン語を学ぶことができる。スウェーデン、ルンド大学で1年のコースを取ることも可能。)
・入学試験(5月)
-スウェーデン語:日常会話、ある程度の読解力、専門用語の知識
-ピアノ演奏:ソナタ、又はソナチネ(1楽章のみ)の演奏
-初見:小曲のピアノ演奏
-即興ピアノ:メロディーの和声付け、コードネームに従った演奏 |